Halley M. Menezes, Md. Jahirul Islam, Masayuki Takahashi and Nobuyuki Tamaoki "Driving and photo-regulation of myosin-actin motors at molecular and macroscopic levels by photo-responsive high energy molecules" Org. Biomol. Chem., 2017, 15, 8894-8903
2016/11 微小管1本1本の運動の光制御に成功しました。
われわれは、生体内で働いている分子機械を人為的に精密に制御する方法を開発することで人の役に立つ分子システムを構築できると考え、キネシン−微小管モータータンパク質系に働く光応答性分子の研究を進めています。すでに、生体由来の分子機械の一つであるキネシン−微小管系に対して働く光応答性阻害剤を新たに合成し、それを加えることで、微小管の滑り運動の自由な光ON−OFF制御を報告しています。 (ナノテクノロジー関連web site “Nanowerk”を参照)
今回は、より高性能な光応答性阻害剤の合成、好きな場所で5マイクロメートル程度の微小領域を照射できる装置の開発、全面照射と組み合わせる新しい照射方法により、初めて1本の微小管の光操作、切断、多数の微小管の一定領域への濃縮に成功しました。
本成果は、ナノテクノロジー関連web site “Nanowerk”でNanotechnology Spotlightsとして取り上げられました。
左の図は、キネシンの活動によって滑走する1本の微小管(チューブリンというタンパク質のチューブ状集合体)の運動が光操作される様子の模式図。下の動画は、1本の微小管のみを滑走させている様子を示している。
K. R. Sunil Kumar, Ammathnadu S. Amrutha and Nobuyuki Tamaoki "Spatiotemporal control of kinesin motor protein by photoswitches enabling selective single microtubule regulations" Lab Chip, 2016, 14, 4702-4709
2016/07 モータータンパク質に対する光応答性阻害剤に関する論文が雑誌の表紙を飾りました。
これまでに当研究室では、モータータンパク質キネシンの自己阻害能を示すテール部の構造を模倣した11アミノ酸残基からなるペプチドと光異性化反応を示すアゾベンゼンを化学結合で繋いだ化合物を合成し、この化合物がキネシンの運動に対して可逆的に光応答する阻害剤となることを報告していた(K. R. Sunil Kumar, et al, ACS Nano, 2014, 8(5), 4157-4165)。今回、11アミノ酸残基のうち必須のアミノ酸とその配列を明らかにし、より優れた光応答性阻害剤を見出すべく、種々のペプチドアゾベンゼンを合成し、その構造―物性相関を調べた。その結果、7つの非常に重要なアミノ酸残基の配列が明らかになり、また、アゾベンゼン部位にメトキシ基を導入することで、物性が向上することが明らかになった。本研究は、生体で働くモータータンパク質を人工的な物質輸送材料として応用しようと考えた時に、如何に分子設計すればよいかについて指針を与える重要な成果である。本研究成果を模式的に表した絵は、本論文を掲載した英国王立化学会の雑誌”Organic & Biomolecular Chemistry”誌の表紙に使われた。
A. S. Amrutha, K. R. Sunil Kumar, K. Matsuo and N. Tamaoki "Structure-property relationships of photoresponsive
inhibitors of the kinesin motor" Org. Biomol. Chem., 2016, 14, 7202-7210
K. Rijeesh, P. K. Hashim, S.-I. Noro, N. Tamaoki "Dynamic induction of enantiomeric excess from a prochiral azobenzene dimer under circularly polarized light" Chem. Sci., 2015, 6, 973-980
2014/03 生体分子機械の完全光制御に成功しました。
われわれのからだの中では、ナノメートルサイズの機械、いわゆる分子機械が活躍しています。その分子機械を生体外に取り出し、その働きを人の手で制御できれば、従来の固く嵩張る機械とは異なる "しなやかでコンパクトな機械" を、新たに人が利用できることにつながります。われわれは、生体由来の分子機械の一つであるキネシンに対して働く光応答性阻害剤を新たに合成し、それをキネシンに加えることで、キネシンの運動活性を好きなときに自由に光ON−OFF制御できることを見出しました。
この成果は、ナノテクノロジー関連web site “Nanowerk”でNanotechnology Spotlightsとして取り上げられました。
K. R. Sunil Kumar , Takashi Kamei , Tuyoshi Fukaminato , and Nobuyuki Tamaoki "Complete ON/OFF Photoswitching of the Motility of a Nanobiomolecular Machine" ACS Nano, 2014, 8(5), 4157-4165
Schematic representation showing that the combination of photochromic compounds, liquid crystals and the action of light produces various dynamic functions for molecular machines, optical memories, lasers, and light modulators.
1. M.Mathews, N. Tamaoki, "Planar Chiral Azobenzenophanes as Chiroptic Switches for Photon Mode Reversible Reflection Color Control in Induced Chiral Nematic Liquid Crystals. J. Am. Chem. Soc. 130, 11409–11416 (2008).
Y. Matsuzawa, K. Ueki, M. Yoshida, N. Tamaoki, T. Nakamura, H. Sakai, M. Abe
"Assembly and Photoinduced Organization of Mono- and Oligopeptide Molecules Containing an Azobenzene Moiety" Adv. Func. Mater., 2007, 17, 1507-1514