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2017年11月
 

モータータンパク質に対する光応答性高エネルギー化合物に関する論文が雑誌のInside coverを飾りました。













        















これまでに当研究室では、アデノシン三リン酸(ATP)に代わって高エネルギー化合物として働き、かつ高エネルギー化合物としての活性を光で可逆的にスイッチしうる「光応答性高エネルギー化合物」AzoTP ()を開発し、モータータンパク質キネシンに与えて、その運動速度を光で可逆的に約80%スイッチできることを示してきた(N. Perur et al., Chem. Commun., 2013, 49, 9935)。光による活性の変化は、AzoTP内のアゾベンゼン部位のトランス−シス光異性化に伴うキネシンに対する親和性の変化に依っている。今回、AzoTPの働きの一般性およびマクロな運動系への適用の可能性を明らかにするために、ATPを基質とするもう一つのモータータンパク質ミオシン−アクチンを用いたモーティリティー実験、筋繊維の収縮現象といったマクロな運動現象へAzoTPを適用する実験を行った。その結果、AzoTP及びその類似化合物は、ミオシン−アクチンの運動をほぼ100%ON-OFFの速度比で光スイッチできること、シス体では約1cmの筋繊維の収縮が起こらないものの、可視光を当ててトランス体にすると直ちに約40%の筋繊維の収縮が起こることを明らかにした。本研究は、AzoTP及びその類似体が、一般にATPを基質とするモータータンパク質の光応答性基質として働くこと、及び、マクロな運動現象を光スイッチしうることを明らかにし、モータータンパク質を活用するマクロな分子機械の駆動−制御方法に利用するために有効であることを示した。本研究成果を模式的に表した絵は、本論文を掲載した英国王立化学会の雑誌”Organic & Biomolecular Chemistry”誌のInside coverに使われた。

   
     

Halley M. Menezes, Md. Jahirul Islam, Masayuki Takahashi and Nobuyuki Tamaoki "Driving and photo-regulation of myosin-actin motors at molecular and macroscopic levels by photo-responsive high energy molecules"
Org. Biomol. Chem., 2017, 15, 8894-8903

2016年11月
 

微小管1本1本の運動の光制御に成功しました。






     







      




われわれは、生体内で働いている分子機械を人為的に精密に制御する方法を開発することで人の役に立つ分子システムを構築できると考え、キネシン−微小管モータータンパク質系に働く光応答性分子の研究を進めています。すでに、生体由来の分子機械の一つであるキネシン−微小管系に対して働く光応答性阻害剤を新たに合成し、それを加えることで、微小管の滑り運動の自由な光ON−OFF制御を報告しています。 (ナノテクノロジー関連web site “Nanowerk”を参照) 今回は、より高性能な光応答性阻害剤の合成、好きな場所で5マイクロメートル程度の微小領域を照射できる装置の開発、全面照射と組み合わせる新しい照射方法により、初めて1本の微小管の光操作、切断、多数の微小管の一定領域への濃縮に成功しました。 本成果は、ナノテクノロジー関連web site “Nanowerk”でNanotechnology Spotlightsとして取り上げられました。 左の図は、キネシンの活動によって滑走する1本の微小管(チューブリンというタンパク質のチューブ状集合体)の運動が光操作される様子の模式図。下の動画は、1本の微小管のみを滑走させている様子を示している。

K. R. Sunil Kumar, Ammathnadu S. Amrutha and Nobuyuki Tamaoki "Spatiotemporal control of kinesin motor protein by photoswitches enabling selective single microtubule regulations"
Lab Chip, 2016, 14, 4702-4709

2016年7月
 

モータータンパク質に対する光応答性阻害剤に関する論文が雑誌の表紙を飾りました。







    






これまでに当研究室では、モータータンパク質キネシンの自己阻害能を示すテール部の構造を模倣した11アミノ酸残基からなるペプチドと光異性化反応を示すアゾベンゼンを化学結合で繋いだ化合物を合成し、この化合物がキネシンの運動に対して可逆的に光応答する阻害剤となることを報告していた(K. R. Sunil Kumar, et al, ACS Nano, 2014, 8(5), 4157-4165)。今回、11アミノ酸残基のうち必須のアミノ酸とその配列を明らかにし、より優れた光応答性阻害剤を見出すべく、種々のペプチドアゾベンゼンを合成し、その構造―物性相関を調べた。その結果、7つの非常に重要なアミノ酸残基の配列が明らかになり、また、アゾベンゼン部位にメトキシ基を導入することで、物性が向上することが明らかになった。本研究は、生体で働くモータータンパク質を人工的な物質輸送材料として応用しようと考えた時に、如何に分子設計すればよいかについて指針を与える重要な成果である。本研究成果を模式的に表した絵は、本論文を掲載した英国王立化学会の雑誌”Organic & Biomolecular Chemistry”誌の表紙に使われた。

   
     

A. S. Amrutha, K. R. Sunil Kumar, K. Matsuo and N. Tamaoki "Structure-property relationships of photoresponsive inhibitors of the kinesin motor"
Org. Biomol. Chem., 2016, 14, 7202-7210

2014年10月
 

新しい絶対不斉反応を見出しました。


自然界では、アミノ酸や糖のように鏡に映した形が元の形と重ならない構造を持った鏡像異性体のうち、一方が使われています。しかし、最初にどうやって一方の鏡像異性体が選ばれたのかは不明です。今回、EE-アゾベンゼン二量体という鏡像異性体を持たない化合物に円偏光を当てることで、鏡像異性体を持つEZ-アゾベンゼン二量体を、鏡像異性体比に偏りを持って作り出す新しい反応を見出し、その機構を明らかにしました。見出された物質と新しい"絶対不斉反応"は、自然界の"ホモキラリティー"達成の起源を説明する新しい分子機構の提案として興味が持たれます。
本成果は、NNNS chemistry blogで取り上げられ、解説されています。

   
     

K. Rijeesh, P. K. Hashim, S.-I. Noro, N. Tamaoki "Dynamic induction of enantiomeric excess from a prochiral azobenzene dimer under circularly polarized light"
Chem. Sci., 2015, 6, 973-980

2014年3月
 

生体分子機械の完全光制御に成功しました。

    




われわれのからだの中では、ナノメートルサイズの機械、いわゆる分子機械が活躍しています。その分子機械を生体外に取り出し、その働きを人の手で制御できれば、従来の固く嵩張る機械とは異なる "しなやかでコンパクトな機械" を、新たに人が利用できることにつながります。われわれは、生体由来の分子機械の一つであるキネシンに対して働く光応答性阻害剤を新たに合成し、それをキネシンに加えることで、キネシンの運動活性を好きなときに自由に光ON−OFF制御できることを見出しました。
この成果は、ナノテクノロジー関連web site “Nanowerk”でNanotechnology Spotlightsとして取り上げられました。

左の図は、キネシンの活動によって移動する微小管(チューブリンというタンパク質のチューブ状集合体)の運動が光スイッチされる様子の模式図。下の動画は、微小管の運動の様子を顕微鏡観察したもの。観察しながら紫外光または青色光を1秒間することでキネシンの活性をONまたはOFFにスイッチしている。

K. R. Sunil Kumar , Takashi Kamei , Tuyoshi Fukaminato , and Nobuyuki Tamaoki "Complete ON/OFF Photoswitching of the Motility of a Nanobiomolecular Machine"
ACS Nano, 2014, 8(5), 4157-4165

2011年11月
 

アミノ酸などの不斉要素である中心不斉を動的に発生させる新しい方法を提案し、Nature Chemistry 誌等でHighlight(PDF)として取り上げられました。

    

アゾベンゼンを2つ置換したメタン誘導体を考案し、アゾベンゼン部位のトランス−シス光異性化反応によって、分子中の不斉中心の発生と消失が誘起されることを実証しました。自然界分子の鏡像異性体の起源の解明や3D表示などで重要な偏光制御材料の開発に寄与するものと期待されます。本成果は、Nature Chemistry 誌の他にChemViews MagazineのNews欄においても“Central Chirality by E/Z Photoisomerization”の表題で取り上げられました。

P. K. Hashim, Nobuyuki Tamaoki "Induction of Point Chirality by E/Z Photoisomerization"Angew. Chem. Int. Ed., 2011, 50, 11729-11730

2010年12月
 
    

フォトクロミック反応による液晶の制御に関する最近5年間の展開をまとめた総説が、Journal of Photochemistry and Photobiology C誌においてInvited Review Paperとして出版されました。左は、本領域の内容を模式的に表す図。

Schematic representation showing that the combination of photochromic compounds, liquid crystals and the action of light produces various dynamic functions for molecular machines, optical memories, lasers, and light modulators.

Nobuyuki Tamaoki, Takashi Kamei "Reversible photo-regulation of the properties of liquid crystals doped with photo chromic compounds"J. Photochem. Photobiol. C-Photochem. Rev., 2010, 11(2-3), 47-61

2010年3月
光駆動分子機械に関する論文が最もアクセス数の多い論文に選ばれました。

我々が最近発表した光駆動分子機械に関する論文(Meethale C. Basheer, Yoshimi Oka, Manoj Mathews, Nobuyuki Tamaoki A Light-Controlled Molecular Brake with Complete ON-OFF Rotation [Full Paper] Chem.Eur.J., DOI:10.1002/chem.200902123(Early View))が、Chemistry - A European Journal誌の論文の中で「2010年2月の最もアクセス数が多かった論文の中の一つ」(Most accessed articles in 02/2010)に選ばれました。(URLはこちらから)

2009年6月
JST 平成21年度シーズ発掘試験A(発掘型)に採択されました。

JST 平成21年度シーズ発掘試験A(発掘型)に採択されました。「輝度向上フィルムを目指した光応答性キラル液晶の実用化開発」研究代表者 玉置 信之(URLはこちらから)

2008年11月
 
    

面不斉に基づく光応答性キラル添加剤の合成と液晶中での可逆的反射色変化に関する当研究室の研究がNature Asian Materialsで紹介、解説されました。

M. Mathews and N. Tamaoki, "Planar Chiral Azobenzenophanes as Chiroptic Switches for Photon Mode Reversible Reflection Color Control in Induced Chiral Nematic Liquid Crystals. J. Am. Chem. Soc., 2008, 130, 11409-11416

2008年1月
 
新規フォトクロミック化合物を販売開始

東京化成工業鰍ヘ、当グループで開発しました新規フォトクロミック化合物2種(カタログ番号D3618,D3619)の試薬としての販売を開始しました。

本フォトクロミック化合物は1,8-ジアミノナフタレンから1段反応で合成され、スピロペリミジン骨格を有しています1。発色体が可視光域全体に広がっており調光材料として優れた特性を有しています。また、アミノ基を有するためさまざまな化学構造修飾が可能です2。

1. R. Davis, N. Tamaoki, "Novel Photochromic Spiroheterocyclic Molecules via Oxidation of 1, 8- Diaminonaphthalene", Org. Lett., 2005, 7, 1461-1464.

2. R. Davis, N. Tamaoki, "Modulation of Unconventional Fluorescence of Novel Photochromic Perimidine Spirodimers", Chem. Eur. J., 2007, 13, 626-631.

2007年9月
平成19年度新規特定領域研究「フォトクロミズム」に計画研究班として参加

平成19年度から4年間の計画で実施されます文部科学省科学研究費特定領域研究「フォトクロミズムの攻究とメカニカル機能の創出」(領域代表者 入江正浩)において計画研究メンバーとして「光駆動分子機械に関する基盤研究」(研究代表者 玉置信之)を担当します。

2007年6月
           
Advanced Functional Materials 誌の表紙を飾りました。
           
「アゾベンゼン含有オリゴペプチドの自己組織化の光制御」に関する論文が Adv. Funct. Mater. 表紙を飾りました。
(Vol. 17, 2007)
   
Y. Matsuzawa, K. Ueki, M. Yoshida, N. Tamaoki, T. Nakamura, H. Sakai, M. Abe
"Assembly and Photoinduced Organization of Mono- and Oligopeptide Molecules Containing an Azobenzene Moiety"
Adv. Func. Mater., 2007, 17, 1507-1514
 
           
2007年1月
       
結晶中において高い量子収率でモノマー発光を示す共役ポリエンの合成に成功しました。
       

当研究室の解説記事が、アメリカ化学会のホームページ Noteworthy Chemistryのコーナーで紹介されました。

                 
Yoriko Sonoda, Midori Goto, Seiji Tsuzuki, and Nobuyuki Tamaoki "Fluorescence Spectroscopic Properties and Crystal Structure of a Series of Donor−Acceptor Diphenylpolyenes"
J. Phys. Chem. A., 2006, 110, 13379-13387
2006年9月
Chemistry&Industry誌 Highlights のコーナーで紹介されました。

コレステロール部とブタジエン部を有する光と熱に応答するコレステリック液晶に関する下記の論文がChemistry & Industry"Highlights" のコーナーで紹介されました。(記事全文

*本研究所は、 Regional Research LaboratoryのSuresh Das氏との共同研究の成果です。

 
Shibu Abraham, V. Ajay Mallia, K. Vijayaraghavan Ratheesh, Nobuyuki Tamaoki, and Suresh Das,
"Reversible Thermal and Photochemical Switching of Liquid Crystalline Phases and Luminescence in Diphenylbutadiene-Based Mesogenic Dimers"
J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 7692-7698
   
2006年6月
 
電子伝導性を示すコレステリック液晶の開発に世界で初めて成功しました。

当研究の紹介記事が下記の新聞に掲載されました。

2006年06月22日 日経産業新聞
2006年06月22日 日刊工業新聞
2006年06月22日 化学工業日報
2006年07月07日 科学新聞
2006年07月26日 半導体産業新聞

                       
M. Funahashi and N. Tamaoki,
"Electronic conduction in the chiral nematic phase of the oligothiophene derivative"
ChemPhysChem, 2006, 7, 1193-1197
2006年
平成17年度NEDO産業技術研究助成に二件採択されました。

平成17年度NEDO産業技術研究助成に課題「簡便に合成可能な新規電解質ゲル化剤およびそれを用いた高機能ハイブリッドゲルの開発」(研究代表者 吉田勝)と課題「液晶性半導体薄膜のガラス化・光重合による安定化と薄膜トランジスターへの応用」(研究代表者 舟橋 正浩)が採択されました。

2004年6月
アメリカ化学会ホームページHeart Cutのコーナーで紹介されました。
「光応答性分子蝶番」の研究成果がアメリカ化学会のホームページ "Heart Cut" のコーナーで紹介されました。
           
Yasuo Norikane and Nobuyuki Tamaoki,
"Light-Driven Molecular Hinge: A New Class of Molecular Machine Having a Nonlinear Photoresponse that Utilizes the Trans-Cis Isomerization of Azobenzene"
Org. Lett., 2004, 6, 2595-2598
2004年2月
Chemical Society Review 誌の表紙を飾りました。
「キラルジメソーゲン化合物の新しい分子組織体とその分子フォトニクスへの応用」に関する総説がChem.Soc.Rev. 誌の表紙を飾りました。
       
V. Ajay Mallia, Nobuyuki Tamoaki,
"Design of chiral dimesogens containing cholesteryl groups forming new molecular organizations and their application to molecular photonics"
Chem. Soc. Rev., 2004, 33, 76-84